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2017年3月 1日 (水)

海風ストレート again!

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幼い頃に初めて訪れた場所の記憶というものは、時としてより深く刻まれるもののようだ。
この海岸は僕にとって何もかも初めての『海体験』というステージだった場所。それらは初めての海水浴であり、寄せては返す波の不思議さに夢中になったり、潮干狩りを満喫した楽しい記憶だった。そして旅館に泊まったということもきっと初めてだったのだろう。なぜなら夕食や朝食の時に銘々にお膳で供される初めてのスタイルに子供心にも感嘆した記憶がある。 この土地にはそんな理由で特別な思入れがあったのだけど、進級するにつれて仲との遊びが楽しくなりついつい足が遠のいていた。
   
成人に近づき運転免許を手に入れると、誰しも行動半径が飛躍的に広くなるもの。
そんな環境の中ではついつい昔の記憶が甦り、年一回程はこの景色に無性に会いたくなりステアリングを向けるようになっていた。中でも砂洲を利用して作られたこの約6kmのストレートは、冬でも天気が良ければ窓を全開にして汐風の中をお気に入りの音楽と共にゆっくりとクルマを転がす、それはそれはお気に入りの場所だった。そんな中で偶然にも、あの津波が襲う13ヶ月前に何気なく切り取ったこの絵が昔の記憶を語るただ一枚のものとなってしまった。
震災の後しばらくして、ネット動画で偶然目にした大好きな松川浦を襲う津波の映像は、言葉にならない程にショッキングなものだった。いつも普通に通っていた漁協の先のクランクを船が流れていったり、沖合いから押し寄せた津波がこの砂洲にもの凄い高さで襲いかかったり。ようやくこの場所を再び訪れる事が出来たのはその一年後の事だった。
想像はしていたけれど、そこの光景はガラッと様変わりしていた。港の建物や砂洲と道路がきれいに無くなっていて、その内側にあった海苔養殖や潮干狩りで賑わった豊かな潟湖などなかったかのように外海と一続きになっている姿だった。

 

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以来、真冬になると再びここに通い始めた。
手前の港などは新しい基準での道路や港湾施設の改修がすすんでいるのだけど、いまや沖となってしまった砂州は工事に入る気配すら見えなかったのは一昨年までのこと。昨年はなぜ来れなかったのか記憶にないのだけど、二年ぶりにこの港にクルマをすべり込ませたのはつい二日程前の事だった。そして沖を見て”あっ!”と思った。あのクレーンの高さから推定すると10m以上はあるだろう防波堤でもう東側外海から遮断されて再び潟湖になっていた。漁船もすこしづつ荷物の積み下ろしをしていてようやく活気が戻りつつあることを感じた。きっとあと2年以内にもあの道路を走る事が出来る予感がして嬉しくなったのは言うまでもない。

 

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天気も良いことだし、ここまで来たのだから外海が見たくなって南に向かった。
南相馬市に入り右田浜海水浴場の手前でクルマを停める。けっこう風が強かったけれど、知人に添えるための風景を探しながら穏やかで明るい海の眺めを楽しんだ。
そしてハッとしたのは昨日の夕方の事。福島・宮城にまたがる震度5弱の揺れの震源は紛れもなく昨日見たあの美しい海の沖合だったから。
今回のは昨年11月以来の余震だったようだけど、これ以上大きな災害に日本が曝されないよう切に願うばかりだ。

 

 

 

 

 

 

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