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2016年10月27日 (木)

676海里の非日常 (2/5) 坂のある港町へ

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山を控えた港町の多くがそうであるように、この街にも地元の生活にとけ込んだ坂道があった。
ようやくその事に気がついたのは翌日の朝の事。何故ならば早朝のまだ薄暗い時に一旦この街を後にして、夕方戻って来た時もすで暗くなっていたからだ。小樽埠頭で動きだしたのは午前四時半過ぎ。真夏ならばすでに太陽も出ていて、すぐさま行動開始といけるのだけど夏至を過ぎて三か月半もすれば、辺りはまだ真っ暗なままだ。ましてや知らない街では夜目が利くはずもなく、空が少し白んで来るというスタートのきっかけを慣れたコンビニの、慣れたコーヒーを飲みながら誰もいない駐車場の隅っこで待っていた。
その後はそのまま太平洋をめざして南下を続け、会いたかった湖と山を掠め、最後に辿りついたのがこの余市という町だった。

平日の午後という時間にも拘らず大型観光バスが並び、観光客でごったがえする様は宮城にあるもう一つの蒸留所とは随分と様子が違っていた。
それまではウヰスキー党の聖地でしかなかったと思われるこの蒸留所も、二年程前に放送されたドラマをきっかけに一大観光地となったことは、この町にとっても実に嬉しいことだろう。
僕が日本のウヰスキー蒸留所を訪ねるのはここで三か所目となる。
まずは御殿場蒸留所に、僕のほぼ地元と言える宮城峡蒸留所、そしてこの余市蒸留所だ。前出の二つはいずれも豊かな深い森の中にあったのだけど、この蒸留所は余市川沿いの込み合う市街地の中に入り口があった。歴史の古さから考えれば、きっと創業当時はうっそうとした森の中だったに違いない。ウヰスキーの作り方はそれほど大きく変わらないからそれは置いといて、僕がこの場所へ来た大きな理由とは創業者の人となりを確かめたかったからだ。やはりここを訪れて初めて知った事がたくさんあって、リタ・ハウスを初め幾つかの建物が国の登録有形文化財に指定された事は、ウヰスキー党の僕ならずともこの町の人々にとっても実に喜ばしい事だっただろう。
そんな事を思いながらポットスチルの下で赤く燃える石炭の火を眺めながら、ゆっくりと過ごした午後の時間だった。

 

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今朝ほど、この街を出発する前に歩いてみたまだ薄暗い運河。
道路を挟んだ街の灯りにボンヤリと照らされた倉庫群と運河の水面。人影どころか動くものすらないモノクロの世界は、現代というタイムラインからフェイドアウトされて、そこだけ明治の時代に戻ってしまったかのような景色だった。
その夜、晩メシを食べながらそんな事を思い返していた僕は、店が呼んでくれたタクシーにホテルではなく、この場所へ再び連れて行ってくれるように頼んだ。

 

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この街には名前のついた坂がたくさんあって、それそれの生活に密着しているのが窺える。
見晴らし坂とか、十間坂とか、職人坂とかいろいろあるけれど一番頷けたのは励ましの坂だった。その最大勾配はなんと24%もあり、その急峻さはクルマ2台分の約10mで実に2.4mも登る計算となる。その200m程も続く坂道を昔の人たちはきっと励まし合いならが登っていたことだろう。

冒頭の坂の絵もどこかで見たような、なぜか懐かしいような感じを受けたのは、テレビドラマや映画のロケ地になった事があるからなのかも知れない。

 

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僕は今時の電話は持っていない。
だからWebで細かく調べながら旅をすると言う事が出来ず、出発まえにザックリと外せない場所や店だけは見ておいて、あとは現地で地元の人に訊くという事が多い。これは僕のスタイルというか性格と言った方が正確かも知れない。この街にこんなステキ坂がある事を教えてくれたのは、Webで検索した観光ガイドなどではなくて、坂下にある宿のフロント係のご婦人だった。

 

 

 

 

 

 

 

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