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2015年11月 2日 (月)

1,000哩の非日常 (1/4)  西の美術館へ

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誰でも自分の好きな場所(風景)というものは大概ふたつや三つはもっているもの。
出会いやきっかけは人それぞれに違っていて例えばその場所にずっと恋焦がれ、ようやくそれが叶った時に必然的に恋に落ちてしまうケース。また偶然に通りかかって一目惚れしてしまった場合もあることだろう。自分の中で持っている”何か”とその場所が発する”何か”一致してしまうと、以降は地図を眺めていても自然とそこに目が行ってしまうようになってしまう。ルートの選定にしてもざっくりと○○方面と思い地図を眺めると、近くを通るのだから寄ってみようという大義名分が出来上がる。

僕は一昨年この金沢の市街地からわずか北に数キロ程の所を通過していた。
それは宿をとっていた七尾へと向かう途中、ほんのちょっと寄り道したかった羽咋市の海岸へ向かう為だった。そこで僕は日本でもここだけ、世界でも三か所しかないその海岸に一目惚れをしてしまった。それは最近経験のないようなもので、宿に着いてからも朝起きてからも頭から離れることはなかったのを覚えている。
翌日は予定していた能登島の美術館に寄ったあとは、一気に500キロの帰路に就く予定だったのだけど、その海岸の魅惑に勝てるはずもないのは自分でも薄々気づいていた。それを後押ししたのは誰が言ったか忘れたけれど”魅惑を振り払う唯一の方法は魅惑に屈することだ”という僕にとっては実に都合の良い言葉だ。本来は東に向かわなければならなかったのに、西の海岸に再びやってくると帰りの時間などとっくに忘れ、十五時過ぎまで過ごす程の入れ込みようだった。

 

僕が金沢に宿をとった理由は兼六園でもなくて、東茶屋街でもなくてこの美術館を見たかったから。
そのきっかけは半年ほど前に見かけたエッセイのような広告文字だった。それにはいきなり『21世紀が近づいた・・・・・』と書かれてあって、いまさら何を言い出すのだろうと思いながら読んでいくと、要するに美術愛好家には北陸新幹線の開通によってこの21世紀美術館がグッと身近になったと言うことらしい。あの時は全く意識の及ばなかった金沢という土地を地図で眺めてみると自然に視野に入ってくるのはあの千里浜だ。距離にしてみれば金沢間は35キロ弱。そこであの大義名分により金沢に行くのだったら近くだし、それに東口の鼓門も朝の散歩で見てみたいし、などと考える間もなく東口から徒歩2分の朝メシ付の格安宿を予約していた。こんど金沢の21世紀美術館に行くのだと友人に話したら、『あぁ、あそこは千里浜のすぐ近くだな』とちゃんと見透かされていて、僕は”まぁなぁ~”としか答えられなかった。  
  

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初めて訪れた21世紀は普段見慣れた美術館とはかなり毛色の違う館。 
常設展や目当ての二つの企画展はもちろん素晴らしかったけど、敷地内や館内にはさまざまな立体芸術が置かれてあって、最初はン!これは一体何だろう?と遊び感覚で引き込まれてフト気が付けば日常を越えた、不思議な感覚にとらわれているとても楽しい場所だ。なかでもタレルの部屋は好きな本でも携えて半日は居たいと思った場所。通路から覘くとあまり意味が解らなくても部屋に入ると感覚が一変する。部屋に差し込む陽射しの角度や雲の模様など飽きることがない。きっとこの部屋の常連さんだろう、連れの人に雨の日の素晴らしさを説明していた。部屋の中に落ちた雨粒が美しい音を響かせるのだと。きっと日本古来の水琴窟のような音がするに違いない。

 

 

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ここ数ヵ月程はフトしたきっかけから食べる物や水には、品目よりも”成分面”でけっこう気を使ってきた。
けれども旅先での非日常感はそんな事すら何処かにフッ飛ばしてしまう。普段の”食べるものはカラダの栄養”が、いつの間にか”旨いもんはココロの栄養”にすり替わってしまう。今回どうしても食べてみたかったものはいつかBSで見た、金沢おでんに加賀野菜の郷土料理とのど黒だった。地元の事は地元でと、その三つを一度に叶えてくれる店をフロントで教えてもらった。定番三品の金沢おでんやのど黒の塩焼き&ごはんも美味しかったけれど、一番ビックリしたのが加賀野菜だ。
今頃の夜明けは大分遅い。まだ夜も明けきらないうちに向かったのは近江町市場。まだ観光客の殆どいない場内は陳列台一面に氷を敷き詰めたり、品物を運び込んだりと規模の大きさも後押ししてこれだけでもかなりの活気を感じる場所だ。そんな中に早朝営業していた八百屋さんがあって、昨夜食べた加賀野菜の話をしたら、旅人でしかも一見客の僕に加賀野菜の目利きのしかたなど親切に教えてくれた。先月から収穫が始まった加賀れんこんにそろそろ終わり気味の金時草、そして昨夜食べて一番ビックリした太キュウリなどの事を教わった。美術館周辺もそうだったけど、駅までの道のりも古いお寺や建物とガラス張りのビルが当たり前のように並ぶ近代的且つ歴史を感じさせる街並み。野菜や金箔を施した羊羹や駅の鼓門などまだほんの一角に触れただけの百万石風情。
西方500光年の所に35光年はなれて輝く二つの伴星。
その加賀の国といふ小宇宙にまた違う季節に訪れるのだろう。

 

 

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僕には何度も訪れたいと思う好きな場所が数多あるといふのは幸せな事だと思っている
 
土地や風景は人と同じく一度会っただけではすべてを知ることなどは出来ないのだから
 
また会いたいというその感覚が湧いてこなければ単なる知り合い程度のこと
 
本当に好きならば何度でも通う

そうすればその度に新しい表情を見せてくれるし

まだまだ知らなかった別の発見を与えてくれる
 
 
 
  (自由人)

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