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2014年3月の記事

2014年3月31日 (月)

カウンター 7:26 .pm

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口開けの客とはその日いちばん最初のお客のこと。
飲食店などでは縁起が良い客とされるという事を、ずっとむかしに一杯飲み屋の親方から聞いたことがあった。いらい僕自身がその客になる事が何となく好きになり、若い頃は足げにかよったものだったけれどいつしかそんなことも、歳と共に忘れてしまっていた。

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それは一昨年のこと。このワインbarで偶然に口開けの客となった時その記憶が蘇ってきた。
僕は口開けの客の時だけ感じることができる、ほかの客の体温で温まっていないその店の空気(雰囲気)を感じるのが好きだ。それは鮨屋のカウンターに整然と並ぶ箸と手塩だったり、料理屋の通路に撒かれた打ち水が創りだすスッキリと引き締まったような空気だったりする。この店のオレンジと黒と薄いベージュのオブジェ達と、それに高めの背もたれが少しの乱れもなくキチンと並んでいるのを見渡す清々しさは、その店の客に対するスタンスと無言のwelcomeのように感じるもの。どうやらふだんからそんなに上客でもない僕ですら、最初のオーダーは少し上等なものにしようと思わされてしまう魔力がその光景や空気にはあるようだ。

実はこのワインbar、時間通りに行けばかなりの確率でその客になれる店。
なぜならば開店時間はこの類の店としてはめずらしい午後7時。そして最初の客がやってくるのはだいたい7時半過ぎだとワインのセンスアップ講座に参加した時にマスターが言っていた。この日知人との待ち合わせは彼の仕事の都合で午後8時。それまでカウンターで軽く・・・と思ったのだけど、一時間も呑めば軽くでは済むまいなと思い直して、少し遅めに出たら珍しく先客がいた。おそらく半年振りで見た
そのご婦人のグラスで気がついた。それがなければいつもの通りに”本日の赤”をオーダーしていたはずだったから。
昨年の秋にはこのログに”赤ワインが恋しい季節”がやってきたなんて書いていたけれど、日中の気温も上がり、そろそろ”キリッと冷えた白がおいしい季節がもうすぐだよ”と視覚から教えてくれた先客だった。
    
       

    
ARABESQUE No.1   
Debussy 

  

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2014年3月20日 (木)

煌めくみなも

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このみずうみは裏磐梯の三湖では一番ちっちゃな湖。
一番大きな湖である桧原湖は、周囲の約八割が外周道路に面しているから、容易に湖の様々な表情を愉しむ事が出来る。二番目に大きな秋元湖はほんの一割程しか道路に面していなくて、地形の関係であとは高い所からしか湖の表情を伺い知れない。ちょうどその中間地点にあるこの小野川湖は、その大きさからわりと僕にはローカルなイメージがあって、周囲の地形の特色からときおり美しい表情を見せてくれる。この奥には大きなスキーリゾートホテルがあるので、この道路は通年通ることができるし、名水百選に選定された小野川湧水として有名な百貫清水を源流とする美しい湖だ。

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日本の春という季節には”水温む”という独特の表現がある。
多くの人たちが雪融けや気温の上昇に春の兆しを見出すなかで、この人はちゃんと水も見ていた。こんな粋な表現を思い出すとなぜか昔聞いた童謡が心に浮かんでしまう。♪はぁるの小川はサラサラゆくよ♪ とか ♪春のうららの隅田川♪ とか・・・
僕は東京に住んでいる訳ではないのだけど、昔から隅田川にはものすごい愛着を覚えていた。それは一昨年に亡くなった叔父と、いまでも背筋をシャキッと伸ばして生活している叔母の目の前を流れている河だから。そんな童謡を思い出して心に浮かんでくるのは、子供の頃に見たその隅田川という大きな河の煌めきだった。
これは昨年の春の事。僕の街から直線距離で22kmしか離れていないこの場所で、夕暮れ近くに春の陽ざしがもたらしてくれた、本当に稀がつくほどの僥倖だった。このみなもの煌めきの美しさはその4倍程の距離となる暗くて孤独な道のりで、退屈しないほどの記憶を蘇らせてくれた。



水の影     by   小野 リサ
  

  
この曲は松任谷由実のもの
淡々と歌う原曲も良かったけれど、柔らかな水の流れのように
Bossaで少しアンニュイに歌う彼女の歌声もいいものだ・・・

時は川
昨日は岸辺
人はみなゴンドラに乗り
いつか離れて
思い出に手をふるの・・・

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2014年3月10日 (月)

Time of 1096 days

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毎週木曜日の昼に可能な限り見ている番組がある。
それはNHKのたぶん東北のみの放送なのだろうけれど”被災地からの声”という番組。震災の年の夏頃から始まった番組だけど、各被災地を廻りながら、事前に取材のアポを取ることなくその辺にいる人から話を聞くという形式で進行してゆく。だから突然取材された人は本音を語るし、それがよけいに心に響いてくるのだろう。いろんな人たちの運命が突然大きく変わってからもう3年という時間が経つ。直後は当座の生活の為に必要だった義援金などだったけれど、その番組で語られる事は少しづつ変わって来ていた。時間の経過とともに関連番組や情報が少なくなってゆくなかで、今はなにが必要なのかという事を取材と通して感じた事を最後に津田キャスターがまとめてくれる。それを聞いてハッとしたのが昨年の夏の事だった。彼は人の流れはお金の流れを生み、お金の流れは物の流れを生み復興をより加速させるのだと言っていた。言われてみれば簡単な事だけど、気がつかなかったというか、無意識のうちに
 .2年前に見たあまりにも変わり果てたその光景 . から目を背けていたのかも知れなかった。同じ東北人としてこれから僕にできる事は、被災した場所に足を運び、そこでお金をつかってくることだと気がついてから、できる限り手綱を太平洋へと向けた。行った先でいろんな人に会って、いろんな話を聞いていると彼らの生きる力を感じるし、なによりそんな少しの会話だけど、僕の東北人としてのDNAを再認識させてくれて、感謝しなければならないのはむしろ僕の方だった。これから先もこの番組がずっと続き、そして僕はそれを見ながら幾度も、幾度も太平洋へと足を運ぶことだろう。
明日、この東北には三度目の祈りの時間が流れる・・・・・・・・・・・・・・・・・

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神の火を弄んでしまった愚かな人たち、そしてその火伏せに携わる現場関係者の日々に渡る、命がけの努力に一刻も早いご加護があらん事をただ、ただ祈るばかりだ。
  

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2014年3月 4日 (火)

春への想ひ

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春になったならまたこの高原にいこう
うえつけ前のキャベツ畑で
なの花のなかを
やわらかな土をふみしめながら
ゆっくりと歩いてみよう
みずうみの見えるこの丘の上で
おだやかなぬるい風と
土のかほりを
ほおに感じていよう

 

春になったならまたこの高原にいこう
かえりにはみずうみの岸辺に
くるまを停めて
ここよりもすこし暖かな
みなもを渡る風を感じよう
そして対岸の山頂の白を見ながら
この冬会ったみず達の表情を
一つ残らず
思い出してみよう
 

春になったならまたこの高原にいこう
国道沿いのあの店によって
明るいテラス席に腰を下ろしたら
シェードオーニングからの
春の光を感じてみよう
やわらかな珈琲のかほりの中で
自慢のシチューと共に
いろいろな事を
最初から想ひだしてみよう
 

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