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2014年2月 3日 (月)

三冬の水 (5/7) : みず雪

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□月□日からのつづき・・・

ビールを再び雪の中に戻すと凍った湖の傍を通り、10キロ程離れた町へと買い出しにやってきた。出てきたついでに昼飯がてら寄りたい店もあったのだけど、日だまりで小首をかしげてこっちを見ていたネコの事を想い出すとそんな訳にもいかなかった。手早く一週間分の食糧と日用品とたっぷりのささみ、それに男の生命線ともいえる特殊嗜好品も忘れずに買い込んで高原の一軒家へと戻る。玄関に荷物を運び入れるとまずは先ほどうずめた缶を掘り出してリビングへ。男の気配とプルタブを開ける音に気付いて二階からネコが降りて来た。男は”これから薪割りも残っているし昼飯は簡単に済ませような・・・”と話しかけると、カノジョには2番目の好物である野菜スープのツナ缶を開け、自分は先ほど町で求めてきたサンドイッチをビールで流し込むとすぐに薪割りにとりかかる。昔は斧を使って随分とほねの折れる作業だったらしいけれど、いまでは斧を振り下ろすコントロール精度に関係なく油圧で好きな大きさに割る機械があるので楽に作業が進む。薪割りを終えたのは日暮れ時、冬の日差しがもたらした水たまりにカラスの足跡が付き始める頃だった。いつも休日はそうしているように少し熱めの風呂にゆっくりと浸かったあとは、少し上等なベルギービールを飲みながらの夕飯の支度。ネコの為のささみをボイルしていて肉屋のオヤジの話を思い出し、自分用にと3本を丁寧に筋を抜いたならこっちはタタキだ。それに好物のホワイトアスパラガスのマスタードマリネ。あとは定番のおつまみ仕様のシーフードパスタ。夕飯はいつもねこと一緒にテーブルで摂ることにしていた。一人ではとても広すぎるテーブルだったが何時しかネコと一緒に食べるようになってから、ちゃんとカノジョも快適にメシが食べられるようにと1/3だけの色と厚さを違えたテーブルクロスも誂えた。洗い物を終えてソファでアイラを舐めているといつもの通り睡魔に襲われる。なぜだかサラリーマンを辞してから休日前夜と休日はいつもこうだし、いまだその理由はさっぱり分からない。二階の寝室にはキングサイズのダブルベットがある。大の字になって眠るのが大好きな男の必需品だけれども、寒い季節になったら左腕は伸ばせなくなってしまった。理由はそこが寒がりネコの眠る場所になったからで、それから男はいつものように左手でしっぽの先を抓むと静かにゆっくりと眠りにおちてゆく。そのネコがまだ人間だった頃の記憶を辿りながら。


(fin)

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