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2014年2月の記事

2014年2月19日 (水)

三冬の水 (番外編) : 月と うさぎと かまくらと

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○月○日
待ち望んでいた昨夜の雪と今朝からの晴れ間。昼飯はコンビニ弁当で手早く済ませてとりかかったのは雪うさぎ。必要なものはと言えば、常にこの季節ふんだんにある雪(但し新雪でなければならない)と南天の実と葉だけ。雪でうさぎの形を作ったならば、南天の葉っぱを耳に、実を目に見立てて完成だけど、表情のあるものはやはり難しい。僕もわりと凝り性な方なので、全体の曲線と表情が愛くるしい雪うさぎが出来るまで・・・なんていったら昼休みだけではとても時間が足りないのも事実なのだ。
南天の木は難を転ずると言って、昔からの縁起の良い木であり厄除けの意味もあると教えられた。むかしは雪うさぎ同様どこの家にも玄関先にあったものだけど、最近はあまり見かけなくなってしまった。

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それは暮れにある人の”書”を見たときのこと。
毛筆で書かれた嫋やかな曲線が何のまえぶれもなく深い記憶の淵から引き揚げてきたのが、それだった。その美しい曲線がもう十数年間も目にしたことすらもなかった雪うさぎと関連していたのかは、いまでもさっぱり分からないけれどそれからというもの、僕の右脳の遥か沖合をずっと跳ねまわっていた。
   

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2014年2月13日 (木)

三冬の水 (7/7) : 春待つ氷雪

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○月○日
最低気温が氷点下15度をも軽々と超えていた朝に外の景色を見てギョッとした。ここ何日も見てなかった、たぶん・・・今年になってから初めての光景で、それは普段の年だとあまり珍しくもない40cm程の積雪だった。日帰りの軽い荷物の登山になれた体には、3泊山行の装備品の重さが堪えるように反射的に雪かきに必要な時間を逆算する。当たり前の事だけどもう少し早起きすべきだったという答えが導きだされる。支度を整え外に出て再びビックリしたのは雪の質。それは標高の高いスキー場でしかまずはお目にかかれない、踏み固めるのも困難なほどのさらさらとしたパウダースノーだった。故に比重は通常の雪の1/3程度だろうか、軽やかに捗る雪かきも楽しいものだ。そしてこの日三度目の驚きは日中の気温の急上昇に伴い、今朝ほどの雪が2~3日放置したコットンキャンディーのように半分以下になってしまっていた。大雪と言われた昨年の累計積雪量は10mを超えたけど今年はまだ6m程度。平年並みと言えば平年並みかな。

初めて見たこのブランコの仕舞い方。普通は鎖ごと外してしまって赤い金具だけが残っているものだが、鎖もステンレスだしきっと大丈夫なのだろう。フト気がついたのはどこかで見た事のある、端がきれいカットされた縄の結び目。この街も含めた雪の降る地方がそうであるように、庭木などは雪囲いと言って板や丸太で雪の重みから枝が折れないように保護しなければならない。それには縄は必需品で二分五厘とか三分とか、職人の美学や対象物で太さで決まりがあるらしい。それに結び方も。いわゆる男結びという結わえ方でなければならないし、結んでから端をキレイにカットすればなお良しだろう。だから僕のように、板とか丸太とかがちゃんと固定されていれば、機能的に別に問題ないじゃん・・・と言うような輩には、あの完璧に計算しつくされた薄雪を纏った日本庭園の美しさは、職人技(神業)として尊崇するしかないのだけれど。
光の春と言われるだけあって、これから日に日に春の日差しは明るさを増してゆくだろう。そしてこの三冬の水も急速に姿を変えて再び日本海へと帰してゆく。そしてまたこの姿で戻ってくるのはだいぶ先の事だけど、この縄が解かれ子供達の歓声が戻ってくるのはもうすぐの事だ。
   

    
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2014年2月 7日 (金)

三冬の水 (6/7) : かた雪

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○月○日
ここ数日は気温の変動が激しい。それはここ最近記憶にはない寒中の風雨だったり、暖房のついていない部屋より屋外が暖かく感じるような気温だったり、そうかと思えばその翌々朝などはいきなり奈落に落とされたような、氷点下16度という気温だったりという具合だ。
僕の頭の片隅にここ2~3日巣くっていたのは、加熱処理をしていない生の豆腐だった。それは仙台時代に好んで食べていたもので、元来絹豆腐は柔らかすぎてあまり好きではなかった僕を虜にしたのは、木綿特有の硬さを維持しながらも舌触りは絹の滑らかさを併せ持った
”それ”だった。何かを一心に食べたいという衝動はたいていの困難は克服できるようで、休日に一日かけてやろうとしていた雑用をたった2時間で終わらせた。直売店が併設されたその工場は、この街と仙台との中間点である宮城県白石市にあって、7つの宿場町を通る”みちのくおとぎ街道”を通って1時間と少しの距離。その道中と言えば雪深い内陸側からトンネルを幾つかくぐると、周囲の雪はみるみる少なくなって太平洋側の気候となるいつもの見慣れた風景だった。直売所での買い物を終えて西を見上げると、蔵王山系の南端にあたる雪深い不忘山。その光景を見た途端に湧きあがった好奇心を、行きと帰りは同じ道を通りたくないという禀性が後押しする。ちょうど先ほど通過してきた宿場町あたりに合流するそのルートは冬に通るのは初めてのこと。そして不忘山の裾野で初めて目にした光景は、雪・・・それも
2メートル程の厚さをもった”白”が、わずか数百m程で太平洋側特有の冬の”地色”変化する三冬の水のグラデーションだった。
   
  

   

   
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2014年2月 3日 (月)

三冬の水 (5/7) : みず雪

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□月□日からのつづき・・・

ビールを再び雪の中に戻すと凍った湖の傍を通り、10キロ程離れた町へと買い出しにやってきた。出てきたついでに昼飯がてら寄りたい店もあったのだけど、日だまりで小首をかしげてこっちを見ていたネコの事を想い出すとそんな訳にもいかなかった。手早く一週間分の食糧と日用品とたっぷりのささみ、それに男の生命線ともいえる特殊嗜好品も忘れずに買い込んで高原の一軒家へと戻る。玄関に荷物を運び入れるとまずは先ほどうずめた缶を掘り出してリビングへ。男の気配とプルタブを開ける音に気付いて二階からネコが降りて来た。男は”これから薪割りも残っているし昼飯は簡単に済ませような・・・”と話しかけると、カノジョには2番目の好物である野菜スープのツナ缶を開け、自分は先ほど町で求めてきたサンドイッチをビールで流し込むとすぐに薪割りにとりかかる。昔は斧を使って随分とほねの折れる作業だったらしいけれど、いまでは斧を振り下ろすコントロール精度に関係なく油圧で好きな大きさに割る機械があるので楽に作業が進む。薪割りを終えたのは日暮れ時、冬の日差しがもたらした水たまりにカラスの足跡が付き始める頃だった。いつも休日はそうしているように少し熱めの風呂にゆっくりと浸かったあとは、少し上等なベルギービールを飲みながらの夕飯の支度。ネコの為のささみをボイルしていて肉屋のオヤジの話を思い出し、自分用にと3本を丁寧に筋を抜いたならこっちはタタキだ。それに好物のホワイトアスパラガスのマスタードマリネ。あとは定番のおつまみ仕様のシーフードパスタ。夕飯はいつもねこと一緒にテーブルで摂ることにしていた。一人ではとても広すぎるテーブルだったが何時しかネコと一緒に食べるようになってから、ちゃんとカノジョも快適にメシが食べられるようにと1/3だけの色と厚さを違えたテーブルクロスも誂えた。洗い物を終えてソファでアイラを舐めているといつもの通り睡魔に襲われる。なぜだかサラリーマンを辞してから休日前夜と休日はいつもこうだし、いまだその理由はさっぱり分からない。二階の寝室にはキングサイズのダブルベットがある。大の字になって眠るのが大好きな男の必需品だけれども、寒い季節になったら左腕は伸ばせなくなってしまった。理由はそこが寒がりネコの眠る場所になったからで、それから男はいつものように左手でしっぽの先を抓むと静かにゆっくりと眠りにおちてゆく。そのネコがまだ人間だった頃の記憶を辿りながら。


(fin)

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