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2014年1月26日 (日)

三冬の水 (3/7) : わた雪

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□月□日
いつもより少し遅く目覚めた休日の朝。室内に表示されている外気温は氷点下9度、積雪1.6m・天候は晴れ。
ここに移り住んでから迎えた初めての冬という季節・・・・・・(こんな件で始まる記事といえば、ご諸兄方にお馴染であるいつもの妄想劇)

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この家の主は物書きを生業とし、自分の人生の成り行きをまるで他人事のように眺めている、人間嫌いで偏屈な男でなければならない。彼が都会の生活を捨ててこんな辺鄙な場所に越してきたのは、凡下的に云えばこの土地(風景)と恋に落ちてしまったという事。それはきっと大が付くほどの重篤なものだったに違いない。山と湖と沼がいくつも点在し、四季の表情が美しいこの 高 原 .に何度か足を運ぶうちに、ここを訪れる事の叶う月2回の週末をいつしか、一日千秋の思いで待ち焦がれるようになっていた。そんな時に出会ったのがこの眺めだった。左手(東)には安達太良山、背後(北)には吾妻連峰が見えるこの場所は、逢いに来るだけでは満たされなくなってきていた男の心を、グッと鷲掴みにしてしまっていた。そして終の住処としてここに越して来たのは去年の早春の事だった。

男は仕事柄カレンダーの色に拘束される訳ではなくて、年に何度も繰り返す日常的なひと区切りを昨日むかえただけのこと。そして今日は偶然にもその日付の色が違っている日だった。こんな日は遠いサラリーマン時代の記憶も蘇り少しワクワクした気持ちになる。けれども何か予定がある訳でもなく、ゆうべの残った鍋に牡蠣と冷や飯を追加した牡蠣雑炊をこしらえながら一日の過ごし方を考えていた。暖炉の火がちっちゃく弾ける音で薪が残り少ない事に気づかされる。そこから磐梯山に目をやると、その手前の軒下には屋根からの落雪で五合目ほどの雪の山が出来ていた。朝飯の後のお茶もそこそこにまず男が手を付けたのは雪片づけ。理由は初めてこのシーズンに入り学習したことで、気温が上がってくると雪がサラサラ感を失って重くなってくること。雪かきなどの冬の単純作業はもちろん初めてで、最初は辛かったけれどだんだん好きになってきた。理由は手足は単調な動作を繰り返しているだけなので、頭の中はフリーとなり仕事に関する考え事や回想などに最適な時間となる。男は初めてとなった今年の初雪の時からの事を思い出していた。

(続く・・・) 1/3

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