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2013年3月10日 (日)

まるで 昨日のことのやうに (Ⅳ)

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夕刻の日射しに最近めっきり日足が長くなってきた事に気がつく。 
来週の春分の日に向けて、冬至と夏至のせめぎあいが続く10日間となりそうだ。先の休日、いつものように多量のメールを半ば機械的に処理していて、あるメールの上でマウスを掴む手がぱったり止まってしまった。それは僕にとってとても懐かしい 、S という差出人だった。同じ姓の知人はほかにもいるのだけど、そのsubjectに記されていた”なんとなく入籍してしまいました”、という文字列に妙な懐かしさを覚えたのは、彼のいつもの口癖がそのまんまだったから。
  
僕より一廻りも若い彼の事はだいぶ昔の記事に記しているけど、その翌月に再び仙台の同じ店で再会していた。相変わらずこの店の牡蠣とオマールのテルミドールは、安くてバツグンの味だったのだけど、少し懐かしい会話の中になにか言いたげな気配を感じながら、その糸口の一端を見つけられずじまいでしばらく気にやんでいた。あの店で会ってから、けっこうな時間が経った感覚はあまりないのが実感だった。メールにはケイタイ修理のトラブルで失ってしまった、番号も記されていたし数枚の絵も添付されていた。彼の現在における生活環境を伝えるものや、美しい細君との仲睦まじい絵を右手のマウスがめくっているうちに、左手は勝手に思い出の頁をめくっていた。

***

彼との出会いは仙台のアパート契約駐車場だった。
2~3台離れた所に停まっていた同じモデルで世代が違う、ビーエヌ・アール32とビーシー・エヌアール33の2台のクルマ。どちらも『伝説の・・・』の語り草で話が始まるもので、どんな人が手綱を握るのだろうと、興味をもっていたし彼もそうだったらしい。ある朝エンヂンに火を入れようとシートに身を沈めた時、声をかけてきたのが彼だった。以来僕らはいろんな処に出かけては、戻ると反省会と称して分町界隈でよく呑んだものだ。
その頃からだろうか(Ⅲ)に記した、彼の動物的とも言える特異な才能に気がついたのは。

そうか・・・彼もついに独身とおさらばしたか。
先の再会で、彼の背後に何かを感じていた気配とは、きっとこれに違いなかった。それにいつも酔っぱらってくると語りだす大空への夢。高いところがキライな僕はあまり乗り気の話題ではないのだけど、それを百も承知のうえでいつも大空への夢を熱く語っていた。メールにはついに念願のモーターパラグライダーのライセンスを取得し、もう5回もフライトしたと書いてあった。想像するしかないのだけどライン(道路)のない空を自由に飛ぶのも、きっと気持ちがいいものだろう。けれど僕にしてみれば航空機のような床のない足元がブラついた状態で、最低でも10m高ければ数百mというのは自分に置き換えるまでもなく、恐ろしくて考えたくもない高さだ。やはり僕の場合は自分のヒップポイントから400㎜下のワインディングを忠実にトレースしていく方が性に合っているのかもしれない。

冒頭の絵は知人であるK氏のモーターパラグライダーのフライト風景だ。
もう、随分と昔のことだろうか。もともと兄上と僕とが知り合いで、その家にお邪魔している時たまたま出会ったのがその弟であるK氏だった。彼も空の自由をこよなく愛する人物で、日曜の早朝に僕の家の上空をいつも飛んでゆく。万一Kに氏タンディムフライトに誘われたとしても僕はキッパリと断って、この時のように地上部隊でのサポートに徹することだろう。

***

そうだ、彼にどんなお祝いを贈ろうか・・・? 
好天に恵まれたこの日、書斎から随分と離れた場所でGに身をゆだねながら、そんなことに想いを巡らす久しぶりに楽しい日だった。
啓蟄を翌日に控えた寒じる(気温の低い)朝。
ひとひらのなごりゆきのように舞い降りた一通のメールが、僕をこんなにも喜ばせている事を彼は知る由もない。
   
  

 

  
  

  
  

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