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2012年11月18日 (日)

となり街で過ごした初冬のこと

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冬が間近となって時雨れる日が多くなってくると、毎年のように思い出す事がある。
それはここから東の峠(県境)を越えてすぐのこの街で、一日を過ごしていた遠い日々の記憶だった。ここ米沢からは新幹線でも20分程度だし、鉄の馬を走らせても一時間をかるがると切る程のかなり近い距離だ。けれども東北の背骨と言われる奥羽山脈を越えたその先に広がるのは、鉛色の空と雪に閉ざされるこの場所とは一線を画す、太平洋側特有の”冬景色”だった。

***

もうだいぶ前の事になるけれど、僕はその街で一年半ほどの間仕事をしていた事があった。
基本はもちろん通勤だけど時々徹夜、そしてたまの週末は仲間と呑んで駅前の安いホテルに泊ったものだ。そこの繁華街には石畳と瓦斯灯がある通りがあり、僕はこの場所が妙に気に入っていたというよりも大好きだった。なぜならば通りの瓦斯灯は、普通多くみられるイミテーションに電球を点けたものではなく、ちゃんとマントルで瓦斯を焚いていているものだったから。もちろんアウトドア派の諸兄ならご存知だと思うけれど、キャンプなんかで使うガスランタン独特のマントル全体が柔らかく輝く、あのどこか懐かしいようなあたたかい光だ。
その通りもちゃんと車道として供用されているので、くるまの軌跡が埋め込まれているストーンを磨き込んで、石畳には瓦斯灯の光を柔らかく反射するキュービックがふんだんに散りばめられていた。そのすこしだけゴツゴツするようなストーン・ペイブメントの感触と瓦斯灯の柔らかい明り。それをきれいに反射するキュービック達の中を、枯葉が北風に舞う音を楽しみながらほろ酔い(僕の感覚では・・・)でハシゴの店へと歩いたものだった。

***
  

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< 馴染み >
福島県福島市

  
先日僕はこの石畳の夕景をずいぶんと久しぶりに訪れてみて想った事があった。 
それは会社員時代も含めて、これまで生きてくるとさまざまな出会いがあったということだ。けれどもその大部分は仕事(人生)のある部分を共有したあとそのまますれちがってしまい、もう会うことのない人たちだった。ちょうどこの枯葉たちも気がつかないうちにどこかに消えてしまっているように。その中には知人はもちろんのこと、その時は友人とさえ思っていた人もいたけれどみんな時間という流れに飲み込まれて、どこかに流れていってしまった。
そんな事を想い返していると、昔からずっとたぶん死ぬまで変わらないだろうと思う、つき合いをしている人たちというのは、ほんのひとにぎりに過ぎないような気がする。ご諸兄方もそれぞれで違いはあるのだろうけれど、僕の場合は数学的に言えば、0.7%ぐらいかも知れない。つまり千人の中のたぶん、六、七人ぐらいのものなのだろう。そのちっぽけな数字の中で大きな部分を占めているのは、やはり昔からの友人たちだ。
十代から二十代を通して、目くるめくような青春を分かちあった友とは、同じ街に住んでいながら普段は会ったり話をしたりすることがなくても  (ひどい時には2~3年)、もう死ぬまで続く縁になっているような気がする。
例えば久しぶりにそんな友人達と会えば、それが何年であろうとも瞬時に時間の壁を乗り越えられるのは、いつものことながら実に不思議な感覚だと思う。お互いの名を呼び捨てにして肩をたたき合い、いつもと同じ短い儀式を終えた後は、もうあの頃への自由なリンクが開かれた僕らの世界だ。
それも昔のままの彼らではなくて、それぞれが今まで歩いてきた長い人生の中からいろいろなものが鎧や、アクセサリのように身体のあちこちにくっついているのは、たぶん僕もまた同じなのだろう。そういうお互いに身に着けているもの発見しあうのは、全部を取り去って昔のままのお互いを懐かしむのと同じぐらいに、僕にとっては楽しいことでもあったりする。

  

< 青春時代 森田公一とトップギャラン>


   
 
来週にはまた季節がひとつすすむ。   



小 雪
冷ゆるが故に
雨も雪となりて
くだるがゆへ也
季 節 便 覧 よ り



 
  

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記憶のFilm」カテゴリの記事

コメント

これって偶然みつけたのですけど、今回のW改名のキャンペーンかなにかですか?でも欄があるので書いていいんですよね?
かさこそっていう写真のタイトルと、アングルはいつものごとくさすがです。
単なる推測ですがたぶん向かいのビルか何かに反射した光をとらえたものではないかとひそかに想像しています。
管理人さんの写真っていつも思いますけど。
どこかに普通と言える部分が必ず入っていますよね。
あの酒田のレストランで居眠りする老人も。
吊り橋の赤い靴も。
今回の右端の車にしてもです。
それをいいスパイスに仕上げられる才能がすばらしいです。
いつも私書箱しか使った事がないのでここにコメントというのは初めてで少し緊張します。お許しを得て公開されるかはどうでしょうか?。
忘れていましたが夏頃からオフィスのホームページから、このブログにつながらなくなったって嫁がいってました。
一度業者さんに確認したほうが良いのではと思います。
ではまたおじゃまします。

投稿: エノケン | 2012年11月18日 (日) 13:04

こんばんは

管理人さんもコメント欄をもうけられたのですね。いままで何回か私書箱のアドレスをコピーしたのですが、途中まで書きかけておわっていました。
いつも美しい写真とそれに目の前にその情景が広がるような文章の記述も素晴らしいと思います。
音楽の組み合わせの選曲センスがいいですね。
文章を読まなくても写真だけを眺めているだけでリラックスした気分になることができます。
今回の人との出会いの文章もスッと心に入ってきます。

投稿: blue-rose | 2012年11月18日 (日) 21:12

こんばんは。
コメント欄を作られたんですね!

今回の写真も、まず、構図に息をのみました。
吊り橋の構図もすばらしかったですが。
写真ですから、もちろんリアルなものですが、
幾何学的な抽象画のような感覚を覚えます。
視点が斬新ですね。
これからも楽しみにしています。

投稿: ずくなしはなこ | 2012年11月18日 (日) 23:01

キャー、本当だ。カレイドスコープでシュールなものを見つけたという相棒からのメールがありました。
今回の記事もいいですね。先日私がオフィスで見かけたのはたしかこれの白黒写真だったような気がします。カラーで見るとこんなに綺麗なんですねぇー。
このブログは写真と文章と音楽で3倍楽しめるのでいつも楽しみにしています。

投稿: ばけねこ | 2012年11月19日 (月) 09:14

エノケンさん。
本当はこのことは想定にない事故のようなもので、残念ながらキャンペーンではありません。でもこのログにコメントを初めて捻じ込んだという偉業を成し遂げた事は大きいのかもしれません。けれど私にしてみれば不意打ちをくらったようなものです・・・(笑)。
あの石畳は私の好きな場所のひとつで、福島駅から10分位のところですか。あの時通り過ぎる車の風でほんとうにかさこそと音がしていたのを記憶していました。今回のコメント(指摘)で気がつきました。居眠りする老人も石畳の車もそうですけどそれが写りこんでいるコマと写っていないコマが存在するのも確かです。
エノケンさんはいつもながら鋭い視点ですね、そうですあの絵の主体はあの反射光の中のキュービックと枯葉です。かさこそと馴染みは昔の話なので最初はモノクロの予定でしたが、やはり夕方の雰囲気が忘れられずに色を戻しました。
オフィスのホームページですが、実はメンテナンスは自分でやっています。いつもここ書斎で右手はマウス、左手はグラスの作業なので麻痺した大脳皮質のミスでリンクがぬけてしまったのかもしれません。確認してみます、ありがとうございました。奥さんにも宜しくお伝えください。

投稿:  自由人  | 2012年11月20日 (火) 12:28

ずくしなはなこ さん

これはなんとも言い訳のしようがない事故みたいなもので、アップの時に確認をしたつもりだったのですが・・・なんだか私自身の心がかさこそしていたみたいで初めてスルーしてしまいました。でも、わざわざ見つけてもらった上に(本人すら気がつきませんでした)コメントをありがとうございます。いままでずっとコメントを解放したことがなかったので知りませんでしたが、いまはメールで通知がくる時代になったのですね。ビックリしました。いつもつぶやきありがとうございます。
             ***
私は写真を職業としているわけではないし、ずくしなはなこさんが言われるように構図とかはあまり意識したことはありません。ただ日常のありふれた生活の中で何を見るかより、どう見るかに意識が傾いているのかもしれません。
ときどき見て楽しんでいただけたら幸いです。

投稿:  自由人  | 2012年11月20日 (火) 13:13

はじめまして ブルーローズさん

やはり慣れないと私書箱は使いにくいと思います。かえってそれが私の正直な意図だったりしていますが。私はそんなに文章は上手ではありませんが、ブルーローズさんから見てそれが出来ているとすれば、たぶん左手のグラスの中身のおかげなのかもしれません。今後とも気が向いたなら時々のぞいてください。
遅れましたがブルーローズさんのブログも素敵ですね。あとでゆっくりお邪魔させて頂きます。

投稿:  自由人  | 2012年11月20日 (火) 13:26

ばけねこさん。

相棒さんもなかなか鋭いですね。普通にブックマークから入ってもなかなか注意を払わないと気がつないのです。現実に私自身がそうでしたから。
あの石畳の絵はばけねこさんの目に入ったのは確かにモノクロです。
この度は私の注意力が散漫だった事故みたいなもので、今回だけの特別キャンペーンとなりそうです。
以後のご意見は再び私書箱をご利用ください。ばけねこさんの私信は題名というかタイトルが時々怖いものがあってドキッとしたりします。(笑)

投稿:  自由人  | 2012年11月20日 (火) 16:18

はじめまして 鍵コメをご希望のmoonwalk.34さん

リンクの件はご自由にどうぞ、特に通知は必要ありません。 
随分と以前から目を通していただいていたようで嬉しいです。確かに文章が変わってきているのは私自身、気がついていませんでした。でもこれも進化(加齢?)の一途でしょう。それも志賀直哉の言ったような大切なことなどほとんどなくて、どうでもいいしようもないことばかりです。
これからもご愛読の程、宜しくお願いします。


投稿:  自由人  | 2012年11月21日 (水) 08:47

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