« Sakura の頃 (3/3) | トップページ | 新緑と初夏の匂い »

2012年5月23日 (水)

はしご と言う名の飲み物

12050301
新年度もスタートしてもう少しで2ヵ月が過ぎようとしている。
思い返してみれば、絵のフィルタリングに追いまくられていた年度末。新年度にはいればそれなりで、なんだかんだと諸会合が続いたりしていた。そんなわけでここ(書斎)でゆっくりと音楽と絵とalcに浮かぶ時間はあまりなかったような気がする。新緑も光をさえぎるほど色濃さをまして、ようやく自分のペースを真ん中において過ごせる季節がやってきたようだ。この地方でもこれから梅雨入りまでの、ほんの短い間の風の薫る季節へと、スイッチ出来たのかも知れない。

僕を良く知るご諸兄は意外かも知れないけど、実は外に出て知らない人と会うのは自分的にはあまり好き(得意)ではない。
それはきっと人間嫌いというほど極端なものではなく、社交嫌いというあたりのカテゴリに属する人間なのかなぁ、と最近よく思う。とは云ってもどうしても顔を出さないとまずい、大勢があつまる会席などもたまにある。そんな日は朝から、放課後にでも歯医者に連れて行かれる子供のような気分なのだ。いつもそんな時は会場に居ても自分の居場所がないような、居心地の悪さに付きまとわれて落ち着かなく、楽しむなんて事はとてもできない。だからあまり失礼にならない程度で早めに会場を後にし、お気に入りのバーでゆったりと寛ぐ事が多い。
ところが、気心の知れた仲間や知人と会うときは話がまるで違う。アルコールが入ればまるで子供のようにはしゃいで、自分でもびっくりするくらいに良くしゃべるし、時間の経つのも忘れて楽しんでいるようだ。

4月も末にさしかかる頃に、ある会合の知らせが舞い込んだ。
メンバーは5~6人の知っている人たちばかりだし、場所はといえば僕と同い年の知り合いがやっている割烹の名前を告げられた。そしてなによりも年配の人たちばかりなので、やっかいな二次会の心配もいらない。そこである計画が僕の心に浮かんだ。それは店から歩いて2分程にあるバーに、久しぶりに顔を出してみたいということだった。

***

僕が特に目的もなく酒席(食席)に、コンデジを持参する事自体実に珍しいと言うか、かなり稀なことだ。  (だから今回の絵があるのだけど)
これから彼の店に行くのだという安堵感もあり、出がけにぱっと目についたので、何気にポケットに入れて連れてきていた。彼は料理人(職人)としては決して妥協は許さない性格で、それは友人などとプライベートにこの店を訪れた時、料理を運んでくれる細君(女将)の言葉の端々からも容易に推測できる。彼の味付けは全体的に極薄めだ。四季折々の素材の味を堪能させてくれる彼の料理は、器との美しさも同時に愉しめるものなのだ。

今回供されたふぐ皮の煮ごり。
2~3年前に食べた記憶があるのだけれど、あまり印象にないところをみると、たぶんその時はビール(これも彼こだわりのものだが)で食べたのかも知れない。その淡白だけれど奥に何か芯のあるダシと歯ごたえが、濃厚な吟醸酒と実に良く合う逸品だと今回初めて気が付いた僕は、残しそうな人と料理の交換トレードで三皿程確保した。知り合いだけの宴席では、好きなものを見つけると僕はこんな大人気ない食べ方をしたりする。

右下のお猪口と徳利は成島焼と呼ばれるこの地方の焼き物で、3年程前に彼がお客用にと窯元にオーダーして作ってもらったものだ。
なんといってもこのお猪口、左利きにとっては堪らない感覚をもっている。小さな窪みが1つあって、それを手前に持てば親指が、向こう側に持てば人差し指の腹がピタリとおさまり、吸いつくような感覚なのだ。これを初めて供された時に嵐山孝三郎ではないけれど、”こりゃぁいい!”と思わず呟いてしまった。後日彼に頼んで1セットを原価で譲ってもらって以来、いまも大切に愛用している。
   

***
  

12050302


< セカンド・ステージ >
山形県米沢市・中央1丁目

   
ほどなくお開きとなった会合なのだが、今回のように二次会の追っ手を気にせず、フリーになれる時はなかなかありそうでないものだ。
このバーは人と来た(連れてきた)のはほんの数える程しかない。一般的にカウンターは、わりと真ん中あたりから埋まってゆくのだけれど、僕は奥から4番目のこの場所が好きでよく座る。何故かと言えば、マスターがカクテルを作る作業を目の前で見られるからだ。
オーダーが入ると、アイスピックで氷を割ることから始まる一連の作業は、流れるように美しく見あきることはない。

僕がいつも最初にオーダーするジンライム。
まず氷をいれてグラスを良く冷やすと、メジャーカップでジンを注ぎ、ライムを入れて再び氷をいれる。そしてバースプーンで一度だけかき混ぜたなら、別に用意しておいたライムの皮をグラス上空30㎝で軽く絞る。ミストのように広がる香り成分が落ち切ったところで、カウンターにのせられると、コースターを滑らせてあざやかに目の前にスッと差しだされる。相変わらず見事な手つきだ。
そしていつも定番のジンライムから僕は、はしごの一杯目をスタートさせた。
  

***

一番ひだりの山崎は、蒸留所の限定樽出し原酒でアルコール度数が61%。

ラベルには<952/2000>のシリアルが打ってある。

とかく男という生き物は、季節限定とか○○限定とかのフレーズに弱い御婦人同様、○○/○○○というシリアル番号に意外と弱かったりする。やはり彼にはこのすっかり酔った僕では失礼なので、次の機会に最初の一杯目で対面することにしよう。  

***

マスターにいろいろとカクテルの話を聞きながら、グラスを重ねていたらだいぶ時間も過ぎている事に気がつく。
誰かがソルティードックのオーダーをいれたので、ついでに僕も同じものをスノースタイルでとオーダーする。それに使う塩は雪のように細かい専用のものだと、いつか彼に聞いたのをボンヤリと想い出していた。
   
  

12050303

< favorites >
山形県米沢市・中央1丁目
  
  
  スノースタイルのソルティドックを飲むと、いつも心の奥底からぽっかりと浮かんでくる、古いふるい物語があった。
 
 
  
   

ごく限られた地方に降った雪  わたせせいぞう

  
   

 

  

  

  

    

|

« Sakura の頃 (3/3) | トップページ | 新緑と初夏の匂い »

好きなこと・好きなもの」カテゴリの記事