« 三が日という日常 | トップページ | 8年前の過去からやってきた男 »

2012年1月21日 (土)

冬のうみ (2/3)

12010301
内陸に住んでいると時々海を見たいという気持ちに駆られる。
その感情は懐かしい場所に帰りたいという気持ちにも似ているし、幼なじみの友に逢いたいという懐かしさのようなものに近い。ふだん日常の生活の中でいつもそんな事を考えている訳ではないのだけれど、偶然ラヂオから流れた曲がきっかけで時折フッと胸をかすめるそんな感情は、すこしづつ自分の中で蓄積されてゆく感覚がある。ちょうど満ち潮が遠くからゆっくりと時間をかけて海岸を満たすように。

今頃の日本海は内陸部とは比較にならないものすごい季節風と共に、とにかくしける日が多い。
海岸線を走る国道も西北西の強い風が運ぶ波しぶきで少し離れた先から霞んで見える。特定の条件がそろった波が集まる磯場からは、この地方では”波の華”と呼ばれるフワフワした泡のようなものが強風に吹かれて舞いあがり、それは遠くから見るとちょうど白い枯葉が風に舞っているようにも見えるのだった。

若い頃はよく晴れた夏の海が大好きだった・・・というよりも冬の海など見たこともなかった。
眩しい太陽や白い雲と青いそらのコントラスト。ジリジリした日差しやそれに焼かれた岩肌の強い磯のかをりや、やけどしそうに熱い砂浜、今思い出してもワクワクするよう時代だった。
けれども最近はどうも強い日差しが少しだけ苦手になったせいなのかもしれないけれど、真夏を避けて秋とか春の海に出掛けるようになってきた。なかでも冬のうみは真夏の海特有の輝くような鮮やかな色彩など微塵もないモノトーンの世界である。

僕はいつものように今ではバイパスとなった国道から逸れて、旧道の集落へと鉄の馬を進める。
ごく弱い霧雨のように飛んでくる波しぶきと身を切るような冷たさをもった汐のかをりの中で、人っ子一人いない細い路地を彷徨う。冬という殻に閉じこもった小さな集落は季節風に煽られる店の看板がカタカタと音をたてていて、強風が運んだ潮で白くよごれたガラス窓には人気 の無いまわりの風景が、寒々と映っているだけだった。こういう一種のうらぶれたような風景に、かえって老いた芸人のような魅力を感じるようになったのも、米俵を重ねたせいなのだろうか・・・。そんな事を考えながら鉄の馬に戻る頃には、メガネに付いた潮が乾き目すぐ目の前の風景すら白くかすんでいた。



12010302

< 西北西の季節風 Ⅱ >
山形県鶴岡市
 
   

***

  
僕はこの仕事場兼書斎でいつでも(仕事柄)自分の聴きたい曲や、ラヂオを自由に聴ける環境にある。
だから耳から音楽が途切れるのはここを離れる時、つまり眠る時や外出する時くらいなものだ。テレビにしてもニュースや自分の興味のあるドキュメンタリー番組などしか見ることがないので、一週間の総計は7~8時間ほどだろうか。それに比べてここで音楽に触れている時間といえば
100時間はゆうに超える。そんな時間の中で今まで知らなかった曲(アーティスト)に触れるのには、近くのCDレンタルショップのおこなっている
5枚で千円のレンタルはけっこうありがたい。僕自身無造作に選んでも最低1枚は当たるものだと思っているからか、ぜんぶ外れた時のショックはけっこう大きかったりするのだけれど。

最近は結構古いアーティストばかりレンタルしていた。
少しは若い人の曲を知ろうと昨年(先月)レンタルした中の一枚に”noon”というジャズボーカリストのアルバムがあった。

***

If...という語りかけるような歌い出しで始まるこの曲。
500マイルというとてつもない遠い距離をあえて、”a”という不定冠詞をつけた a hundered miles を重ねていって自分から何かが少しずつ離れてゆくのを確かめるように、せつなく歌い込んでいる。またピアノとコントラバスの間奏も100マイルずつという積み重ねを自分に言い聞かせるようにもの悲しくきこえる。 

500miles.    <noon version>

12010303

< a one milie away >
新潟県岩船郡山北町



If you miss the train I'm on,
you will know that I am gone,
you can hear the whistle blow a hundred miles.
A hundred miles, a hundred miles,
a hundred miles, a hundred miles,
you can hear the whistle blow a hundred miles.

Lord, I'm one, Lord, I'm two, Lord,
I'm three, Lord, I'm four, Lord,
I'm five hundred miles a way from home.
Away from home, away from home,
away from home, away from home,
Lord, I'm five hundred miles away from home.




***

500milesと言えば約800Km。
ここから南西に向かえば四国足摺岬、
北に向かえば日本最北端の宗谷岬のあたりだ。 

   

   

   

   

   

|

« 三が日という日常 | トップページ | 8年前の過去からやってきた男 »

scenery (過ぎてゆく眺め)」カテゴリの記事

きづきの扉」カテゴリの記事