一羽の蝶
そこには三つの偶然とひとつの (+) があった。
まずその日が平日であったこと。次にこの時期にしてはひどく寒い日だったこと。そして最後のひとつは、そこにそのCaféがあったことだ。カノジョとの出会いは月曜日のお昼前。青空に誘われてでかけたまでは良かったのだが、風の強さと冷たさにでたまらず飛び込んだCaféでの出来事だった。
店に入るなり『温かいコーヒーを』とオーダーすると、マスターはまずまず気もむな(急ぐな)と言うような表情で、水とメニューを笑いながら差しだした。そこにはずらっと並んだ豆の種類が。もうお任せである。程なくチョイスされたコロンビアを淹れている、彼の手が伸びたカップが最後の (+) なのだった。
そのCupの中でカノジョは美しい薄紫の花々の中を、優雅に舞っていた。
山形県米沢市
コーヒーを堪能するタイミングと、カノジョに気づくタイミングが実際には少しズレていた。それは早く温かい飲み物を求める自分の欲求が勝っていたからだろう。やはりホッとすると辺りに目を向ける余裕が出てくるらしい。そのような訳でカップの中身はもう無いのである。
通常Caféで供されるCupは形は様々であろうが、概ね無地の白いものか、地味な焼き物風と言う既成概念みたいなものが自分の中にあったし、今までもその通りだった。しかしこの店の棚には美しいCupが幾つも並んでいた。これからの初めて味わう豆達とCupの組み合わせはどんな時間を与えてくれるのだろうか。
上の絵はインディアンサマーの昼下がり、心地よい日だまりの中で。
もうすぐ訪れる厳しい季節を前に太陽の匂いを記憶に留める時間。
(続)
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