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2010年9月 8日 (水)

雲ノ高サ (height of cloud) 16:9の景色

煙とナントカは神代の昔から、どうもお高い処が好きらしい・・・・・・・・・

ぽっかりと予定が空いた休日のこと、フトそらを見上げると吸い込まれそうな青空。それを見てずいぶん久しぶりであるが『岳人』となってみたいと思った。硬派の諸兄方は日帰りの山行なので、必要最小限の軽装備をザックに詰めて・・・となるだろうが、今の自分はもう、いかんせんオヤジなのである。約10分後には、サッっとこの身ひとつで、鉄の馬の手綱を取っていた。途中手綱を握りながら気になっていた事は、最近主流になってきたハイビジョン特有の16:9という画角(比率)のことだった。

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< 雲の高さ >
秋田県由利本荘市~山形県遊佐町

海岸線から標高1,200メートルまでのワインディングロードを一気に駆け昇る。出発して140分。ようやく雲の視線と同じ高さに辿り着いた。天候の具合でそらと、海のブルーが溶け合う様は見ることが叶わなかったが、『雲ノ 高サ』を十分に堪能できる光景だった。

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海岸線から180度視線を返すと、その山は実に険しい山容を覗かせる。谷底から際限なく湧き上がるガスと、遥か彼方の何の屈託もない青空を見ていたら、25年程昔のある記憶が甦ってきた。
朝日連峰を縦走中であった8月1日に凍死しかけた事である。それまで想像すらしなかった真夏の凍死と言う恐怖だった。ヘタをすれば人生最後の青空の記憶となったであろう、その景色と稜線のあたりまでもが実に酷似している。


夏山の鉄則。それは午後3時までには山小屋に入ること。
昼過ぎから携帯ラヂオに雑音が入って雷の発生は把握していたけれど、抜けるよな青空だし、相棒と万年雪にコンデンスミルクをかけて深山のかき氷とシャレこんでいた。
大朝日小屋まであと1キロのところまでたどりついた午後5時過ぎ、それまで穏やかそのものだった夏山はいきなり牙をむいた。
初めて体験した目の前を真横に走る稲妻。平地で体験してきたピカッと光って、しばらくしてからゴロゴロと音が聞こえるのとはまったく違い、目の前の出来事なので音と光が同時なのだ。それもゴロゴロなんて可愛いものではなくて、バーン・Bangという物凄い爆発音しか聞こえない。それに雷雲の中の静電気のせいだろうか、昔セルロイドの下敷きで遊んだような逆立つ髪の毛の感覚と、近くの尖った岩の先端がジィー・ジィーと音を出し始めて自分が雷雲の中での落雷に会っている事を理解した。
けれどもここは尾根。両側は急峻な斜面で降りる訳にもいかずに何とかせねばという思いだけだった。
そんな時、ふと昔ボーイスカウト時代に隊長との雑談を思い出した。
最悪の事態が起きてもどちらかが生き残るようにと、ふたりともすべての装備を放り出して100m程離れた窪みに身を伏せた。その直後に滝のような土砂降り、そして物凄い強風。山での鉄則である体を濡らさないことも守れなかった。最初は寒くて、寒くて、ガタガタ体が震えていたが、やがてそんな事もなくなり、だんだん眠くなってくる。そしてたぶん夢を見たのだろう。それは自宅で温かい風呂に入っているシーンだった。そんなふゎっとなる感覚の中でフト目を覚ますように再び寒さを感じまた体が震えだす。きっと凍死とはこんなことを繰り返して、夢の中へ誘われるのだろう。
悪運が強かったのだろうか、間もなく雷雲も過ぎ去って明るくなり風も止んだ。
幸運にも相棒も無事で、再会を果たすことができた。無事に小屋にたどりつきその時口にしたレトルトカレーとスープ、それに少し濃いめの水割りが美味しかった。


山はその過酷な環境の中へ訪れる者達を、時にはその命と引き換えにと言う条件付きで、温かく迎え入れるのである。


なにも、山に限った事ではないが・・・

無知とは自分に多大なる損失と、他人に大きな迷惑をかける事を、いつも教えてくれている気がする。

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帰路につくころ、絵本のような眺めと出逢った。

それは午後特有の、少しアンニュイな青空と遥か眼下に広がる広大な光る海。それとありふれた野草の美しいシルエットたちだった。

ずいぶん昔。友人に尋ねられた事がある。どうして山に登るのか?と。
その時確か、自分の足で歩かなければ見られない光景があるからだと答えた記憶がある。しかし今ではオン・ザ・ロードを鉄の馬で駆け抜ける、軟派なただのオジさんである。
そう言えば、2度目の成人式を迎えてからだいぶ経つ。

 

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